Aぇの紅一点神出鬼没のお姫さまⅡ (ページ14)

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グレショーラブロマンス(公演②) ページ14

小島の人形として生きてきた姫城。
周囲も彼女を哀れみの対象として見ており、腫物のようにできるだけ関わらないように過ごしている。
そんな姫城と何の因果か出会ってしまった成金貴族の子息である正門。
二人はいつしか密会を重ねるようになり、惹かれあっていく。

姫城の住む屋敷。
広い庭の片隅へ忍び込んできた正門が足を向ける。

正門「また会いましたね」

その場に静かに座っている姫城へ
優し気な視線を姫城に向ける正門。

姫城『あなたが、私に会いにくるからでしょう』

正門「でも、あなたも僕に会いに屋敷の外である庭に出てきてくださる」

姫城『……そう、ね』

正門「そろそろ、名前を教えていただけませんか」

姫城『…………ユキネ』

正門「そうではなく、本当の名前を」

姫城『！気が付いていたのですか。私が何者か』

正門「黙っていてすみません。あれから、父にあなたのことを聞きました。でも僕にとってはそんなことどうだっていいことだったから話ませんでした」

姫城『あなたは私が気味悪くないの？死んだ少女の身代わりとして生きているのよ』

正門「そんなことはどうだっていいんです。僕が知りたいのは本物の貴方だけ」

姫城、迷っているように言いよどむ。
正門はその間もまっすぐに姫城を見つめる。

姫城『りり』

姫城、小さな声で本当の名前を呟く。

正門「りりさん」

姫城『もう十年近く呼ばれることのなくなった名前よ……。今更呼ばれてもあんまり実感がないの』

正門「僕は、僕だけにはその名前を呼ぶことを許してください」

姫城、正門の頬に手を伸ばし触れる。

姫城『どうか、私にどんなことがあろうと貴方だけは私の名前を覚えていてください』