✦ メーデー105、こちら警邏中 ページ35
・
他のメイドはそそくさと掃除やら書類整理やらの手伝いを行ってしまったので、この状況が初めてなAは置いてきぼりだ。廊下でぽつんと佇んで、Aは思う。
「(ど、どうしよう……)」
「あれ、Aちゃん？」
「！？」
振り向くと、声の主はペ神だった。一昨日ぶりだね、と優しく笑って、Aはほっとしたと同時に、慌てて告げる。
「あのっ、洗濯物が早く終わってしまって、みんなどこか行ってしまったんです。こんなパターン初めてなので私、どうしたらいいか分からなくて、」
「……ああ！ 多分皆各自の配属先に手伝いに行ったんだろうね。Aちゃん、自分の配属先分かる？ ……ってあ、捕虜は配属されないんだっけ」
確かそうだった、と手を打ったペ神。Aは配属だか山賊だか分からない思いで首を傾げる。しばらくして、彼は考えるような仕草をやめて顔を上げた。そして彼女を見る。
「そうだ、Aちゃんさえ良ければ、俺の職場のお手伝いに来てくれないかな？」
「えっいいんですか！」
「うん。寧ろ人手不足やから大歓迎や」
「ありがとうございます！！！」
元気やなあ、と明るく笑うペ神。そうしてAは、彼に手を引かれるまま医務室に足を運ぶのであった。
໒꒱· ﾟ
こちら、医務室にて。
「じゃあAちゃん、患者棟で昼食渡しに行ってくれないかな」
「昼食、早いんですね」
「そうなんだ。ここに居るのは殆ど軍人でね、一般軍人は昼食がメイド達一般職員より一時間くらい早いんだ。やから早く渡さないと煩くてさ」
そうなんですね、と納得するA。大きなワゴンを受け取ってそこにできる限りの食事を置く。そして先日見た患者棟と書かれた大扉に手を置くと、行ってきますと笑ってAは扉を開けた。ペ神は行ってらっしゃいと言おうとして、思い出して慌てて言う。
「Aちゃん！ 患者室は外鍵やから、ノックして応答あったら開けて食事渡してな。あと105番って記されてある部屋には絶対に入っちゃアカンで。何言われても無視な」
「分かりました、105番ですね」
そう言ってAは今度こそ患者棟に足を運んだ。
蒼色の、いかにも目に悪そうな廊下だった。白いリノリウムの床が隅々まで清掃が行き届いていて、以前住んでいた人間の国の小さな病院とは比べ物にならない。Aは感心した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にのやも(プロフ) - モモモさん» きゃあ！ そんなこと言われたら沢山書きたくなっちゃいます！🥹 ご期待に添えるようなるべく余談回挟めるよう頑張ります！🙇🏻♀️" (4月5日 8時) (
レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
モモモ(プロフ) - 展開が一つ一つ丁寧で面白くてもう全部読みきっちゃいました！3章以内で終わるのか...もっと書いてもいいんですよ🥹（わがまま） (4月4日 21時) (レス) id: 90bb9ca7b2 (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 梓月さん» コメント有難う御座います！🙇🏻♀️" 是非命狙われてる夢主ちゃんを守ってあげてください……！👊🏻✨ (4月1日 17時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
梓月(プロフ) - ぐいぐい来られると困っちゃうのあまりにも可愛い…守護らねば (3月31日 21時) (レス) @page42 id: c21b6e797e (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 滅華狂さん» あの場面はとっても慎重に書いたので、そう言って貰えて作者冥利に尽きます！😭✨ これからも更新頑張ります！🙇🏻♀️" (3月27日 11時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にのやも | 作成日時：2024年3月24日 17時
