✦ ページ24
・
しかし二人が仲睦まじげに肩を並べ廊下を歩いているのを想像するとやけに腸が煮えくり返りそうで、ゾムは自分の気持ちを悟りかけたが、現実から目を逸らした。
「……ごめん、困らせたな。シャオロンやっけ？ アイツはさっきまで食堂居って、多分射撃訓練場行ったんとちゃうかな」
「え！ いや、困らせたなんてそんな……。ああ、シャオロンさんの場所教えてくれて有難う御座います」
深深とお辞儀するAを見る。二人の身長差がさらに開いたようだった。それが身分とか距離とか、そういうものが離れてる隠喩のように思えて、ゾムは無性に淋しくなる。
Aはそんな彼の気持ちを無意識のうちに汲み取ってしまった。そして、最大の悪手を出す。
「本当、知り合いの中では一番頼りにしてます、ゾムさん。また後日、お時間あればお茶でもしましょう。それじゃあ！」
「エッ」
ええと、先に言う。聡明な読者諸君ならお察しの通り、ゾムは幹部だ。一般メイド如きがお茶の誘いなぞできるわけが無い。だがAは幹部の紹介を受けていないため、ゾムをただの一般兵だと思い込んでいるのだ。故にこんな命知らずな誘いができた。
そして、また先に言う。ゾムは普通じゃない。つまり、普通なら不敬にあたりそうな台詞も、ゾムの心を躍らせる材料になってしまったのだ。
ゾムは颯爽と走るAをぼうっと見送りながら、自分の耳が熱くなるのを感じた。一番頼りにしてる、"いちばん"頼りにしてる……。また後日お茶でも、また後日、"また"…… "また"をAが作ろうとしてくれている。おれのためだけに！ 思わずゾムはわらった。
悪手というのは、その二人の関係を悪くするという意味ではなくて、関係をよりややこしく、むつかしく、不可思議なものになることを伝えるために使用した言葉だった。
まあつまり何が言いたいかと言うと、
「……うん、またな」
見事にゾムのストライクゾーンを踏み抜いてしまったというワケだ。
໒꒱· ﾟ
一方そのころ。方向音痴なAは行き方を忘れていた射撃訓練場の方向を道行くメイド達に聞いては進んで、やっとの思いで到着した。外にあったそれは東京ドーム位の広さで、遥か遠くに射撃の的があった。まだ昼休憩時間なので人数は多いとは言えないが、それでも皆自分の技術を磨きあげるべく銃を撃っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にのやも(プロフ) - モモモさん» きゃあ！ そんなこと言われたら沢山書きたくなっちゃいます！🥹 ご期待に添えるようなるべく余談回挟めるよう頑張ります！🙇🏻♀️" (4月5日 8時) (
レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
モモモ(プロフ) - 展開が一つ一つ丁寧で面白くてもう全部読みきっちゃいました！3章以内で終わるのか...もっと書いてもいいんですよ🥹（わがまま） (4月4日 21時) (レス) id: 90bb9ca7b2 (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 梓月さん» コメント有難う御座います！🙇🏻♀️" 是非命狙われてる夢主ちゃんを守ってあげてください……！👊🏻✨ (4月1日 17時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
梓月(プロフ) - ぐいぐい来られると困っちゃうのあまりにも可愛い…守護らねば (3月31日 21時) (レス) @page42 id: c21b6e797e (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 滅華狂さん» あの場面はとっても慎重に書いたので、そう言って貰えて作者冥利に尽きます！😭✨ これからも更新頑張ります！🙇🏻♀️" (3月27日 11時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にのやも | 作成日時：2024年3月24日 17時
