空の街

35〜須藤side〜 ページ35

〜須藤side〜


あれからAさんは俺と目も合わせなくなって。
そんなタイミングで俺は専務と海外出張が始まって、
何も進展しないまま時間だけがただただ過ぎていった。


出張中は電話もメールもしないまま久々に帰ってきた
今日、僅かな期待と共にいつも通りにお土産を渡せば、もうそれを受け取るのも嫌そうで。進展するどころか
状況はもう最悪だった。



「ビールぬるくなるぞー」

「……飲まねぇし」

「せっかく合コンの予定すっ飛ばしてきてやったんだから食えよ」

「じゃあ今から行けよ」

「素直じゃねぇなぁ心配してきてやったのに」

「お前が勝手に押しかけて来たんだろ」


家に押しかけてきた土井は
勝手に入って勝手に酒盛りを始めて


「だって須藤君今日お土産くれながら死にそうな顔してたから〜」

「してねぇし」

「で？仮の期間いつまでだっけ」

「……明日」

「もしかしてもうフラれた？」

「………かも」

「かも？」

「すっげーわかりやすく避けられてる」

「んでお前はそれに気づかないフリして無理に明るく
接して自爆してんの？」

「その観察眼女にも発揮できたらお前モテんのにな」

「何したのよ」

「何もしてねぇよ。飯食ったのもだいぶ前」

「デートは？」

「イベントん時にとっくに断られましたぁ。週末も仕事終わりもずっと永遠に全部用事あるってー」

「…………フラれてんじゃん」

「だから言ってんじゃん」

「お前はそれでいいの？」

「いいも何も俺が決める事じゃないし。今の課題はどーやったら前みたいな普通の同僚に戻れるかって所だな」

「……告白した事後悔してんの？」

「……。あの人の負担にさせた事は事実だからな」

「でもまだ答えもらってないんだろ？」

「そんなの…」



ーーピンポーン



チャイムの音に顔を見合わせれば


「…宅配？」

「いや……」

「じゃ瀬野さん？」

「なわけねぇだろ」


土井を残して玄関を開ければ


「……」

「……ごめん、突然」

「何誰？」

「あっ、ごめんお客さん？なら…」

「おぉ！瀬野さんじゃ〜んっ！俺もう帰る所だったんでどーぞどーぞ。じゃまたなっ」

「え？あ、ごめん土井くんなんか、」

「大丈夫大丈夫。ごゆっくり〜〜」


「ーー痛ッッ！！」


バン！と俺の背中を強く叩いた土井はニコニコしながら飲みかけの缶ビール片手に出て行って


「………入っても、いい…？」

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