此処が私の ページ9
ああ、もうすぐなんだな。そう呟く胸の内ではそれに比例するかのように鼓動がどんどん高鳴っていく。緊張と不安が胃をぎゅっと締め付ける。
落ち着け、大丈夫。私が何もしなければ何もないんだから。波風を立たせず、面倒事を起こさなければきっと。きっと平穏な生活を送ることが出来るのだから。
自分にそう言い聞かせている内に、車はゆっくりと停車した。
「……ふう」
一つ深呼吸して横へ顔を向ける。すると窓越しに大きな校門と、その奥に趣ある立派な建物が見えた。あれが、今私が通っている学園である。
ウォルワラード学園──。
百年以上の歴史と伝統を持つ、この国の最高峰の教育を受けられる場所である。ちなみに学園長はエーラット家現当主であり、私の祖父が勤めている。
元々貴族など由緒正しき家柄を持つ少年少女のみが入学を許可されていたが、国や人々の思想が年月と共に変わり、今ではその才を認められたり将来有望だと示すことが出来れば、その門戸は一般市民にも開かれている。とは言っても、現状はやはり大半貴族出身の者が占めている。才能は無くても家名や金で入学出来た者、平民でも成績優秀な者など色々だ。
運転手が私がいる後部座席の扉を開ける。私は学生鞄を掴んで車から降り、運転手に小さくお礼を言ってから校舎に向かって歩き出す。
周りから生徒達が親しげに挨拶を交わしたり楽しく会話をする声が聞こえてくる。思わず、私は懐かしいと感じてしまった。この雰囲気、一体何年振りだろう。まさかもう一度味わう日が来るなんて。
目の前で高く聳える建物は私が知っているそれとは全く似てないのに、視界に一瞬だけ、飽きるほど見たあの光景が重なった。これから私はこの学園の生徒だ。改めて気を引き締める。そうでもしなければ、この先待っている出来事に立ち向かえないだろう。
すると早速、私に突き刺さる視線を感じ始める。ちら、と気付かれないよう視線を周りに向けると、昇降口へ続く道を歩く私の姿を生徒達が遠巻きでジロジロと見てきていた。うう、分かっていたこととは言え、あまり良い気になれない。注目されるのは苦手だけど仕方がない。耐えろ。耐えるんだ私。
「A様……ですよね？」
その時、不意に声を掛けられる。見てみると其処には数人の女子生徒達がいて、その先頭に立つ子の顔には見覚えがあった。ああ、この子は知っている。と言うか見慣れている。だって彼女はエーラット嬢とよくつるんでいる内の一人だから。
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
