令嬢を演じる一般女性 ページ8
○けれどその場面に出会した私は頭の隅に追いやられていた淑女の所作を思い出し、裾を持ち上げ頭を下げて挨拶をした。すると両親は口を開けて呆然とした。
次いでエーラット嬢は使用人達に対して冷たい態度とは言わないが、あまり温かみのある対応はしなかった。自分の命令なら何でも聞いてくれる。それが当たり前だと教えられたから。自分に歯向かう者などいない。自分に従う意思のある道具でしか思っていない所があった。だから感謝の言葉も謝罪の言葉もほとんど言わなかった。
しかし私は私の為に色々としてくれる使用人達にきちんと感謝の言葉を口にしたり、廊下ですれ違い頭を下げて挨拶してくる彼らに律儀に返した。すると全員、鳩が豆鉄砲を食ったように「えっ⁉︎」と目を見開いた。
使用人達は皆いつもエーラット嬢の顔色を窺っていた。彼女の癇癪に触れたらどうなるか。虐められるか、最悪クビにされてしまう。だから関わらないように遠巻きにしたり、愛想を振り撒きペコペコ頭を下げたりなどしていた。彼女がどれほど周りから気を遣われていたのか。家族以外の他人からどれほど厄介者にされていたのか。彼らの反応だけで充分知り得た。
私は思わず溜め息を吐いた。以前、この境遇は神からの贈り物なんだろうか、なんて思ったけれども。前言撤回。もっとマシな人間の所で目を覚ましたかった。それこそ貴族と言う肩書きが無くても。貧乏な家庭で生まれた平凡な庶民の方がまだマシだ。
あちらの世界でも苦労したのに、神は私に更に試練を与えるつもりのようだ。私が何をしたって言うんだ、全く。この怒りを何処にぶつければいいんだと胸の内で呟く毎日。
とまあ、そんな感じで私の新たな人生は始まった訳で。これからは我儘娘のレッテルを剥がし、他人を傷付けず誰にも迷惑を掛けない、令嬢としての品格を少しずつでも取り戻していこうと決意した。勿論私らしさも忘れずに。
でもこれはほんの序の口。私に待っている次の試練は──あそこだ。
自家用の送迎車から眺める街並みは見慣れているはずなのに、やはりどこか知らない街のように感じて違和感が拭えなかった。その内この景色にも、そしてこの気持ちにも慣れてくるだろうとは思うがいつになるのやら。早くこの気持ち悪さを無くしたい。
そんなことを考えながら窓の外を見ていると、見慣れた制服を着た少年少女達が歩道を歩く姿が段々と増えていく。
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
