生きる覚悟 ページ6
結局一人になりたい口実が思い付かず尚且つ彼女の好意を無下にすることも出来ず、適当に言葉を返した。けど喉が渇いているのは本当だ。嘘は吐いていない。
即行動を始めたベスタは再び部屋から出ていった。扉の向こうに消えた彼女の気配が途絶えると私はもう一度深い溜め息を吐く。さて、これからどうすればいいんだろう。
今私が見ているこの世界は夢なのか。いやこんな生々しい感覚が夢であるもんか。それとも今まで私が見てきたあの世界が夢なのか。そんなはずは。だって今の私の人格は『あちら側』のものだ。どちらも夢？ それとも現実？ ああ、頭が痛くなってきた。
まさか私は──死んだのか？ そしてこの少女に生まれ変わり、急に前世の記憶を思い出したとか？ そんな漫画みたいな奇跡が現実で起こり得るか？
私の記憶する限り、この世界に魔法とか超能力とか人智を超える力はないはずだけど。もしかしたら人知れずそのようなものが存在していて、それが私の身に降り掛かったのかもしれない。あり得なくもない。だって私はこの世界の全てを知っている訳じゃないから。
もしそれが存在していたとしたら、出来ることなら私を帰らせてもらえないだろうか。帰りたい。此処は私の世界じゃない。この子の世界だ。
けど──本当に？ 本当に、帰りたいと思っている？ あの世界に？ 本心じゃないでしょう。だって、ずっと逃げたいと望んでいたじゃないか。
小さな願いすら叶わず、裏切り続けられる惨めな人生しか待っていない世界に、今更未練なんて。あるの？ ──いいや、ない。そう、ないはずだ。
と言うか、そもそも根本的に帰れる保証なんて無いのだ。まあ今回のように何の前触れもなく、突然戻ることもあるかもしれないけれど。もしかしたらこのまま一生、此処で生きていかなければならないかもしれない。覚悟を決めなければならない。
でも、正直あちらの世界より良い人生を歩むことが出来るかもしれない。何もかもが全く違うのだから。そう考えると、もしやこれは神からの贈り物なんだろうか。やり直させてあげると。いや、それならせめて赤ん坊からやり直させて欲しかったわ。何でこんな中途半端な所からなんだ。
──なんて、いるかどうかも分からない存在に文句を言ってもしょうがない。私は再びベッドが下りて窓へと向かう。そして眩しい日差しの向こうに広がる景色に目を向ける。
見慣れた、見知らぬ景色。
私はただ黙って、眉を微かに顰めた。
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
