態度の変化 ページ43
○百歩譲って必死に手を伸ばす私の姿を哀れんで助けてくれたとしても、それから話し掛けてくる必要はないはず。そのまま立ち去ればいいのに。
まさか──また会長に言われて私に接触してきたとか？ いや、もう勘弁して。関わりたくないってのに。何でこっちが離れるとあっちから近付いてくるのよ。意味が分かんない。
ああ、もしや私を見ていたと言うのもあれか。監視と言う奴か？ 私がまた問題を起こさないかとか約束を破らないか見張っているとか。まあ、それなら少しは納得出来る。彼らには私への信用などこれっぽっちもないんだから。
とりあえず、彼がどんな理由で私に近付いてきたのかは知らないし別に知りたくもないけど、此処で彼と二人きりな所を誰かに見られたら私が困る。結局まだ生徒会と繋がっているとか噂されたらたまったものではない。
「こういうのもあれですけど、驚きました。以前貴女はあまり本を読むのが好きじゃないと言っていたので……」
「あの……！」
会話を続けようとした彼の声を遮る。すると彼は微かに目を丸くした。
「えっと、本を取って下さってありがとうございます。そ、それでは私はこれで」
両腕で本を胸に抱き、私は一礼すると逃げるようにその場から離れる。早く彼から遠ざからなければ。その思いに駆られながら、いつもの席へと向かった。
紙を捲る音、誰かが椅子を動かす音、時折聞こえる小さな話し声。それらを含んでも図書室の中は静寂だ。まるで時間がゆっくりと進んでいくような。ずっとこの雰囲気に身を委ねていたいと思う程、私はその心地良さに浸っていた。
「Aさん」
しかし突如として、本の世界にのめり込んでいた私の意識は呼び戻された。私ははっと顔を上げ、その声が聞こえた方へ振り返ってみるとまたもや彼が──エーミール様が隣に立っていた。その顔に少しばかり申し訳なさを滲ませながら。
「読書中すみません。閉館時間になりましたので……」
えっ、と私は次に彼の反対側へ首を回す。向こうの壁に掛けてある時計を見ると、その針は既に閉館時間を少し過ぎていた。どうやら読書に集中し過ぎたようだ。いつの間にか窓から差し込む西陽の朱が更に濃くなっていた。
「も、申し訳ございません……！」自分の失態と声を掛けてくれた彼の手を煩わせてしまったことに対して咄嗟に謝罪を零す。急いで本を閉じ、それと鞄を持ってガタリと立ち上がる。
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
