混乱しています ページ5
「分かりました。ありがとうございます」
お大事に。軽く診察をした後、先生は穏やかな人柄が滲み出た笑みを見せて部屋を出て行った。その背中を見送って、ふう、と私は息を吐く。
分かっていたことだけど、とりあえず大事無くて良かった。しかし二日も眠っていたとは。おそらくこの記憶の混同と関係しているのかもしれない。
「お嬢様、本当に大丈夫ですか……？」
眉を顰めながら自分の手元を凝視していると不意に声を掛けられる。顔を上げれば未だ不安を拭い切れていない侍女の顔があって。医者から何とも無いと言われたのに。いや、それとも私の険しい表情を見た所為なのか。
「大丈夫、だけど……ちょっと頭が混乱しちゃってて。ごめんねベスタ」
「えっ⁉︎ い、いえ！ お嬢様が謝ることなど……っ。こ、混乱するのも無理ありませんから」
おそらくあの時彼女が戸惑いを見せたのは、私が彼女に対して敬語を使ったからだろう。私の記憶が正しければ、そうしたことは一度もない。そもそも主人が従者にそんな言葉遣いなどしないだろう。
混乱していた。普段の口調でその一言を言えば、彼女は納得した表情を浮かべた。何とか誤魔化せたようだ。まあ、まさか中身が変わっていることなんて誰も思い付きはしないだろうけど。
「お嬢様がお目覚めになったと聞いたら、旦那様も奥様もきっとお喜びになるでしょう。お二人とも、とても心配しておられましたから」
「あ、はは……」
頭の中に泣きそうな顔で飛び付いてくる両親の姿が容易に想像出来る。こちらの両親は自分の子供にとても愛情を注ぎ、酷く甘やかしているから。そう言えば、いつぞや私が風邪をひいた時ですらこの世の終わりみたいな顔をしていたのを記憶の端に残っている。
私は苦笑いしか出来なかった。私じゃない私の記憶に気持ち悪さを覚える。
「あ。お嬢様、お腹は空いておりませんか？ あれから何も口にしていないので、何か軽めの食事をご用意致しますか？」
すると思い出したかのようにベスタがそう尋ねてきた。確かに言われてみれば、私はこの二日間何も食べていないんだった。けれど食欲は──正直何かを食べたい気分にはなれない。胃が受け付けなさそう。ただ今はそれよりも、心の整理をする時間が欲しい。切実に。とりあえず、一人になりたい。
「いえ食事は……。それより喉が乾いたわ。水を持ってきてくれない？」
「かしこまりました」
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
