近付く緑色の影 ページ37
○気付いた瞬間ページを捲る手を止めた私は顔を固まらせた。えっ、はっ？ 突然の出来事に頭が混乱し始める。その所為もあり、何も考えず顔を上げてしまったことを私はすぐさま後悔した。
「……ッ⁉︎」
眼前にいるその人は頬杖を突きながらこちらを見ていた。いや、見ている気がする。だって彼の瞳は、長い前髪と影に隠されてよく見えないから。
視界に映った人物があまりにも予想外すぎて、私の思考は更に乱れ鼓動は不愉快なほどに大きく脈打つ。何で。
何で──ゾム様がいるのよ⁉︎
どうしよう。どうすればいい。おそらくこれは完全に目が合っている。互いの存在を完全に認識してしまっている。この状態で彼を無視をするのは流石に失礼か。でも関わらないと決めた手前声を掛けるのも。いや、そもそも近付いてきてわざわざ自分の存在を気付かせるように目の前に座ったのは彼だし。まさか彼が私に用なんて……ない！ ないに決まってる！ ある訳がない！
「何で此処で飯食ってん？」
あれこれと彼の意図を考え脳内をぐしゃぐしゃにしながらもどう対応すればいいのか悩んでいたその時。まさかのまさか、何と彼の方から声を掛けてきたではないか。これまた予想外すぎて、私は思わず目を大きく見開いてしまった。
あの彼が自分に、と驚きを隠せなかったがこれは。どうすべきか。答えるべきなのか。てか、訊きたいのってそれなの？ もっと他に言うことがあるんじゃないのって思うんだけど。
まあでも話し掛けてきたのはあっちだし。私が話し掛けた訳じゃないから、これに答えることは約束を破ることにはならないか。それならいいか、とようやく決心がついた私は内心溜め息を吐きながらも重い口を開いた。
「……何で、と言われましても」
「やってお前、いつも食堂使ってたやろ。んでよく俺らのこと待ち構えてたし」
ああ、そう言えばそんなこともしてましたね。私の頭の片隅にいつぞやの記憶が蘇る。嫌がらせのように、食堂で昼食を取る彼らの輪に必死に入り込もうとしてたなあ。その時は大変ご迷惑をお掛けしました。
ははっ、と胸中で苦笑いを零した私は彼から視線を逸らす。
「今は、何と言いますか……居心地が悪いと感じましたので。この時間だけでも、人目を気にせず落ち着いた場所にいたいと思ったからです」
嘘偽りなく答えた。しかし彼からの反応は特になかった。ただ無言だけ。
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
