美味しいものは人を幸せにしてくれる ページ31
「頂きます」
そう言って、私は目の前のテーブルに広げたお弁当から卵焼きを箸で摘んだ。それを口に含むと卵と出汁の効いた味が中で広がり、私は思わず顔を綻ばせる。ああ今日も、うちのシェフの料理が美味しい。
只今の時間は昼休み。私は此処、屋上にあるテラスで自前のお弁当を食べることが日課である。
この学園には勿論食堂がある。広くて、提供している料理は一流のシェフ達が作り品数も豊富。昼休みに入れば、それはもう全校生徒が一斉に集まるかと言うくらい人気の場所だ。
それなのに、何故私がこんな所で自前のお弁当を食べてるかと言えば。それは簡単。人目が気になって嫌だったから。
最初は勿論私も食堂を利用していた。だけど何度も言ったように、私はこの学園の嫌われ者として超が付くほどの有名人。皆私に気付くとそそくさとその場から離れたり、遠くからこっちをじろじろ見てきたりして。酷く居心地が悪かった。
私も注目されることは覚悟していたからあまり気にしないように努めてたけど、結局駄目で。どうやったら人目を気にせず安心して昼食を取れるだろうかと、考えた結果がこれだった。
エーラット嬢になる前、私がまだ学生だった頃、学校に給食とか学食がなかったからお弁当を持っていっていた。それを思い出したのだ。
お弁当はほとんど母が作っていたけれど、高校辺りになると私が作ったりもしていた。だから最初自分で用意しようと思ったんだけど、突然厨房に入ってきた私をシェフ達が驚いて。理由を話したら更に驚き、酷く焦った様子で私を止めてきた。まあ当たり前だよね。エーラット嬢は料理なんて今まで一度もしたことがなかったから。
それでも私は諦めずに頭を下げて何度も頼み込んだ。その熱意に負けたのか、あるいはただ私を厨房に立たせたくないだけなのか。ならばお弁当は自分達が作ります、と言うことで彼らは折れてくれた。ただでさえ忙しいのに迷惑ではと思ったが、結局自分が厨房にお邪魔するのもそれと大差ないと言う考えに至り、少し心苦しく感じたが彼らに任せることにした。
屋敷で出すような豪華なものでなく質素で、食べられるなら適当なものでも構わないと頼んだのだが。彼らはきちんと自分達の仕事を全うし、毎日美味しいお弁当を私に持たせてくれる。本当にありがたい。私の我儘を叶えてくれる彼らに何か労いが出来ないかと最近考えている所である。
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
