説明をお願い ページ4
○とてもじゃないが、現実だと受け入れられない。それくらい衝撃的なものだった。
頭の中で、何で、とひたすら繰り返す。私は日本と言う国で二十数年暮らしてきたはずなのに、目が覚めたら別人になって別の場所にいるなんて。しかも此処で赤ん坊の頃から今の姿になるまでの記憶を持ち合わせているとは。こんな奇天烈なことがあるだろうか。
疑問は疑問を呼び、私の思考は混乱でぐちゃぐちゃになる。不安はやがて恐怖になって胸の内を掻き乱す。意味が分からない。
出口のない迷宮に嵌っているとベスタが部屋に戻ってきた。眼鏡を掛けた、如何にも聡明そうな面持ちの壮年男性を連れて。
男性はベッドに腰掛ける私の傍に寄って「お体の調子はいかがですか？」と、やはり彼女と同じような質問をしてきた。何ともないと返事した後、私はベスタに向けた質問を今度は彼に向けた。すると返ってきたのは「覚えていらっしゃらないのですか？」と言う問い掛けだった。
質問に質問を返されても困るんだけど。なんて、私も人のことは言えないけれど。私は少しばかり苛立ちを覚えてしまった心を落ち着かせ頭を横に振った。すると彼の後ろで控えていたベスタがようやく事の経緯を話してくれた。
──二日前、屋敷の庭を散歩していた私は突然倒れてしまい、それから今日まで一度も目覚めることなく眠り続けていたらしい。原因は不明。病院でくまなく検査したが、特に体に異常は見当たらず。医者達全員、首を傾げるしかなかったと言う。
それを聞いて私自身も驚いた。自分が倒れたなんて、やはりそんな記憶は一切なかったのだから。ギリギリ思い出せるのは、おそらく倒れたと思われる日の朝食の内容だった。
けれどようやく合点がいった。ベスタのあの表情も、医師の反応も。疑問が一つ消えた。しかし大きな問題が残っていることには変わらない。
記憶に関してはおそらく医者でもどうすることも出来ないだろう。いやこんなことを話したら、きっと頭がおかしくなったと思われてしまうだろう。ただでさえ現状を把握し切れていないのに、これ以上面倒なことが起きるのは御免被る。それにきっとこれに答えてくれる者は、此処には誰一人いないと思う。
助けてもらえない。自分で何とかするしかない。けれどそれはいつものこと。そう、いつものことだ。慣れている。
「それでは私はこれで失礼致します。容体が急変しましたら、すぐに私に連絡を下さい」
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抹茶ちよこ(プロフ) - かぼさん、お久し振りでございます。いつもいの一番にコメントして下さりありがとうございます✨よくある題材で設定が設定なので今までの作品に比べ糖度は低いですが、私らしく物語を紡いでいきたいと思っております。最後までお付き合い下されば幸いでございます。 (1月18日 8時) (
レス) id: 68848dd40a (このIDを非表示/違反報告)
かぼ(プロフ) - 新作おめでとうございます✨初めてお見かけする雰囲気のお話に、今から続きが待ち遠しさと楽しみでいっぱいです(*´ ‐ `*)気温の変動が激しい時期ですので体調崩されないようお気をつけてお過ごしくださいませ。 (1月16日 22時) (レス) @page8 id: 36a6e4e509 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：抹茶ちよこ | 作成日時：2024年1月16日 20時
