＊ ページ4
*
Aはニコッとオルヴァーに笑いかけた。
『オルヴァー。2人でくっついていたら、きっと怖くないわ』
「うん……」
不自由な手を動かし、Aはオルヴァーを抱きしめた。
思った通り、彼の体は小さく震えていた。
ギュッと優しく抱きしめ、ゆっくりとAは口を開いた。
『大丈夫よ、オルヴァー。きっとラウラさん達が探してくれる』
きっと、チーノも動いてくれている。
自分が帰らないことに気づいて、探してくれてるだろう。
エーミールだって、心配しているかもしれない。
絶対に、迎えに来てくれる。
『チーノさんが、絶対に助けに来てくれるわ。だから、大丈夫よ』
「僕たち、帰れる……？」
グスグスと鼻を鳴らすオルヴァーを、強く抱きしめながらAは明るく言う。
『ええ、ちゃんと帰れるわ！私がついてるから、心配しないで』
そう言うと、オルヴァーは小さく頷いた。
まだ涙が零れている彼を安心させるように、Aは微笑んだ。
2人がやっと落ち着いた頃、暗い部屋の隅から声が聞こえてきた。
「あの……」
『っ？！』
突然聞こえてきた声に、Aは大きく肩をビクつかせた。
それから、思わずオルヴァーを庇うように彼を隠した。
こわばる体のまま息を潜めていると、トタトタ……と足音が近づいてくる。
やがて、うっすらとその姿が見えてくると、Aは大きく目を見開いた。
なんと、他にも３人の子供が捕らえられていたのだ。
全員、オルヴァーと同じ年くらいの少年・少女でそろって不安そうな顔をしている。
『(他にも、子供達がいるなんて……)』
驚いたけど、彼らの表情を見たら声をかけられずにはいられなかった。
柔らかく微笑んで、彼らに呼び掛けた。
『こっちにいらっしゃい。皆でいれば怖くないわ』
すると、彼らはポロポロと涙を流しながら駆け寄ってきた。
彼らはAに抱きつくと、すすり泣いていた。
しっかりしなくては。
ここで自分が情けない姿を見せるわけにはいかない。
この子達がいま頼れるのは自分だけなんだから。
Aはキュッと口元を強く結んだ。
これから先のことを考えると、不安で怖くて堪らなかった。
けれど、そんな気持ちを押し込めるようにAはグッと口角を上げた。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：双葉ちほ | 作成日時：2021年7月3日 22時
