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「ねえ、ねえ！A姉ちゃんも一緒に出ようよ！」
『え？』
「一緒に踊ろ！A姉ちゃんと一緒がいいー！」
『踊るって……？』
「僕たち、ステージでダンスをするの！A姉ちゃんも一緒にやろうよ！」
1人の子供の声を皮切りに、周りの子供達も賛成だと声を上げ始める。
わいわいと盛り上がる彼らに囲まれて、Aは驚き困惑の表情を浮かべる。
思わずラウラに目配せをするも、彼女はニコッと微笑むだけ。
『わ、私が出てもいいのかしら……？』
「「もちろん！！」」
期待の眼差しを向けられて、Aの心は揺れ動く。
お祭りは確かに楽しそうだ。
1人で遠巻きに眺めようかと思っていたところであったが……
大好きな彼らと共に過ごせるのであれば、それはそれは最高の日になるかもしれない。
少し考えた後、Aは照れくさそうに子供達を見つめた。
『私も、皆と一緒に参加したいわ……』
いいかしら？と首を傾げるAを否定する者は誰もいなかった。
すぐに彼らはAの手を引いた。
「やったあ！決まりー！」
「A姉ちゃんは僕の隣ね！」
「ダメ―！Aお姉ちゃんは私達の隣ー！」
『あはは……』
すぐに引っ張りだこになってしまったAの肩を、ラウラが優しく叩いた。
「そうと決まれば、さっそく採寸しなきゃね」
『え？』
「衣装よ！私が作るから、後でお部屋にきて頂戴ね」
穏やかな太陽の下、教会の周りで子供達とシスターラウラに囲まれて、Aは嬉しそうに笑った。
数か月前までは、こんな光景を考えることもできなかったなと、少し離れた場所でチーノはのんびり眺めていた。
それは、彼女がこの環境に馴染んできたということ。
国の伝統行事に参加できるまでに、信頼を積み愛される様になったのだ。
知らない土地で孤独な生活を送っていたのだから、この状況は実に喜ばしい事。
そう、喜ばしい事なのだ。
「……チーノ？」
「……」
「おーい、チーノ」
横に座っていたシャオロンが、チーノの前で手をブンブン振る。
何度名前を呼んでも、眼鏡の奥の瞳はAを捉えたまま動かない。
じっと見つめて、何かを考え込んでいる。
それに痺れを切らしたシャオロンが、ついにチーノの肩をどついた。
「痛っ！！何すかシャオさん！！」
「なんぼ呼んでもお前が上の空だからやろうが！！そんなに気になんなら、はよデート誘えや！！」
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作者名：双葉ちほ | 作成日時：2021年7月3日 22時
