第22話：一緒に ページ26
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「A姉ちゃーん！」
教会の裏でラウラの手伝いをしていたAの傍に、子供達が駆け寄ってきた。
シーツを干していた手を止めて彼らに向き直ると、小さな手にカラフルな洋服が握られていた。
『わぁ！素敵なお洋服ね！』
「今度の収穫祭で着るんだよ！」
『収穫祭？』
子供達の話に首を傾げていると、ラウラがヒョコッと顔を出した。
「この国一番のお祭りなのよ〜。今年一年の収穫と、来年一年の豊作を祈って開かれるの」
『へえ……！』
「楽しいわよぉ。美味しい物もいっぱい出るし」
「街中綺麗にライトアップもするんだよ！」
目をキラキラ輝かせながら、子供達は収穫祭の話をAに聞かせた。
初めて聞く催し物の話に、Aも胸を躍らせていた。
やがて、数名の子供達と共に、ヘロヘロになったシャオロンとチーノがやってきた。
国王軍の彼らでも、流石に長時間の鬼ごっこは体に堪えたようだった。
「ちょ、ちょお休ませてや……」
「お前らホンマ……容赦ないな……」
『お疲れ様です、お2人とも』
未だ息の整わず、ぐったり横たわっている2人を見てAはクスッと笑った。
すると、1人の子供がAの袖をクンッと引っ張った。
「ねえ、A姉ちゃんも収穫祭はお仕事なの？」
『え？あ……どうなのかしら』
何しろ収穫祭の話を今知ったのだ。
エーミールから特別何かを頼まれているわけではない。
特別な仕事があるとは思えないが……
Aが頭を悩ませていると、シャオロンが首だけ上げて口を開いた。
「収穫祭の間は、公務は全部休みやでー！！」
「俺らは警備やけどなーー！！」
大の字で寝そべっているチーノの叫びが青空へ吸い込まれていく。
国王軍には、やはり休みは無いらしい。
Aとしてはちょっぴり残念な気持ちではあるが、それを口にしてはいけないとグッと呑み込んだ。
聞けば、収穫祭は城下町の華やかなお祭り。
ミルエイ国でも似たような催しはあったが、皇女として参加するためお祭りの様子を見れるのは一瞬だけ。
いつもならエリーシャに頼んで、お忍びでこっそり眺めるだけのものだったが、今回は気兼ねなく街へ行けるのだ。
だからこそ、そんな特別なイベントをチーノと共に見て回りたかった。
『(でも、お仕事なら仕方ないわね……)』
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作者名：双葉ちほ | 作成日時：2021年7月3日 22時
