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Aもチーノの姿を見るなり微笑んで小さく手を振った。
「2人とも何してんのー？」
『ゾムさんに本をお渡ししてましたー！』
ビックリしているシャオロンを見て、Aはクスクスと笑った。
すると、シャオロンはゾムも稽古に参加しないかと声をかけた。
ゾムはふたつ返事で了承すると、Aに手招きをした。
『え？』
「一緒に呼ばれとるやん。しっかり掴まっとけよ」
言うや否や、ゾムはAを横抱きにすると、そのまま渡り廊下の手すりに足をかけた。
『へっ？！』
勢い良くゾムが飛んだのと同時に、Aは彼にしがみついた。
なかなかの高さからのジャンプに、Aは思わずギュッと目を閉じた。
ドンッという音と衝撃音の後、Aは恐る恐る目を開けた。
体に痛みはなく無事に着地したのだと分かると、ホッと胸を撫で下ろした。
ゾムの奇行に慌てて駆け寄ってきたシャオロンとチーノは、ゾムにガミガミ言っていた。
「おまっ！いきなり何してんねん！」
「危ないでしょ！A抱えてんのに！！」
ギャイギャイ文句を言う2人にゾムはヘラヘラ笑ってごまかしている。
しばらくは、ゾムの腕の中で楽しそうな彼らを見ていたが、次第にソワソワしてきてAはゾムを見上げた。
『あの、ゾムさん……』
「んー？」
『その……そろそろ降ろしてもらえませんか？』
少しだけ沈黙が流れる。
様子を伺うようにAは首を傾げるが、ゾムは黙ったまま。
しかし一向にAを離さないゾムに、チーノが腕を掴んだ。
顔は笑っているが、目は据わっている。
「ゾムさん、離してやってくださいよ」
「えー……嫌や」
ゾムはAを抱えたまま、ユラユラと体を揺らす。
まるでお気に入りのおもちゃを手放さない子供ような態度に、Aはビックリして慌ててゾムの胸を押した。
何もしなければ、ずっとこのままだと気づいてしまったのだ。
『こ、困ります！私、この後教会に行く用事が……』
「教会？」
『はい。教会のラウラさんとお約束があるんです』
「そうっすよ。Aはこの後、俺と用事あんですから！離してください！」
ムウッとゾムを睨むAとチーノ。
ゾムは、そんな2人を交互に見てにんまりと笑った。
「なら、それ俺が行ったるわ」
『え？』
「だから、お前の用事、俺がついてったるわ」
「は？！」
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作者名：双葉ちほ | 作成日時：2021年7月3日 22時
