第20話：第１部隊長さま ページ19
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A達の誘拐事件から数ヶ月経った。
あの事件の後、密輸の制圧任務が遂行された。
特設チームが任務にあたり、無事に犯人達を制圧したとのこと。
件の誘拐犯達は、この密輸犯達と繋がっていた様で、ようやく事件解決だとコネシマが嬉しそうに話していた。
ようやく、A達の周りに平穏が訪れ、それぞれが元の日常を取り戻そうとしていた。
ただ一人を除いて……
「いいですか、くれぐれも気を付けてください。城の中なので大丈夫だと思いますが、なるだけ人の多い道を選んで。外に出るようでしたら、必ず誰かと行ってください。1人になるようでしたら、近くの兵士を捕まえて……」
『エ、エーミールさん……大丈夫ですから』
Aの肩をガシッと掴み、早口でまくし立てるエーミール。
事件の後からずっとこんな調子の彼に、Aは毎度苦笑いを浮かべていた。
後から聞いた話だが、事件のあった日のエーミールも相当動揺していたようで、ずっと城内を歩き回っていたそうだ。
仕事に復帰してからも、過保護かと思うほど心配してくる。
『(それだけ心配かけちゃったってことだもんね……)』
申し訳ない気持ちでいっぱいになるが、すぐにフルフルと頭を振ってパッと笑顔を向けた。
心配をかけてしまったからこそ、自分が笑っていることで安心させたいと、Aは考えていた。
『では、第１部隊長様の部屋まで本を届けて参りますね。その後は、教会に向かうので……日が暮れる前には帰りますので』
「……外に出る時は」
『分かっています。チーノさんと一緒に行く約束をしてますから』
ニッコリ笑ってAは書庫を後にした。
エーミールに心配そうに見送られながらも、彼女は軽い足取りで第１部隊室へと向かった。
言いつけ通り、なるだけ人の目がある所を歩いて目的の場所へと急ぐ。
両手でいくつかの本を抱えながら歩くAの姿はもう見慣れたもので、すれ違うメイドや使用人が軽く頭を下げたり、手を振ったりしてくれる。
その1つ1つに、Aも笑顔で返す。
ふと、渡り廊下から中庭を見下ろすと、丁度兵士達が剣の稽古をしているのが目に入った。
『(あれは……)』
そこには、第２部隊長のシャオロンとチーノの姿があった。
それぞれの部隊の兵士達と共に、剣を振るっている。
Aは自然とチーノの姿を目で追って小さく微笑んだ。
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作者名：双葉ちほ | 作成日時：2021年7月3日 22時
