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チーノも微笑みながら、ゆっくりと口を開いた。
「……国王様は、優しかったん？」
『え？』
「ミルエイ国を戦争で、壊滅させた王様やん？ホンマはどんな人なんかなーって思って」
『なっ……！』
初めてのチーノからの不躾な質問だった。
ついカッとなって、Aは勢いよくチーノへと向き直った。
しかし、彼はニッコリと笑っていて、それが余計にAの神経を逆撫でした。
『なんてこと言うんですか！！』
「だって、事実やろ？国王様がしっかりしてへんかったから、戦争にも負けてミルエイ国は終わったんや」
『っ！！』
顔を赤くして、プルプルと拳を震わせながら、Aは声を上げた。
『そんなことないです！！父は、いつだって国民の事を想ってました。強い心で国を導き、優しさに溢れている人なんです。末娘の私にも気を使ってくれて……だから、戦争に負けたのだって、お父様のせいじゃ……！』
「A」
チーノが静かに彼女の名前を呼ぶと、Aは肩をいならせながらも、口を噤んだ。
まだ頭に血が上っているようで、息が荒い。
そんな彼女じっと見つめながら、チーノは聞いた。
「国王様、お父さんなん？」
その言葉で、やっと気づいた。
突然、何の音も聞こえなくなって、彼の言葉だけが頭に木霊する。
一気に血の気が引いていき、Aは大きく目を見開いた。
気づいた時にはもう遅く、慌てて口元を覆った。
『あっ……』
カタカタと体が震えだし、自分のしでかした事の重大さを受け止めきれない。
言ってはいけないことを、口にしてしまったのだから。
青冷めた顔で何も言えないでいると、突然チーノの表情からストンッと色が落ちた。
見たことないくらい真剣な顔で、Aを追い詰めるように、こう言うのだ。
「なあ、お前ホンマは何者なん？」
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作者名：双葉ちほ | 作成日時：2021年7月3日 22時
