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「チーノさんが間に合って良かったわ。あの人、すぐにお城を飛び出したのよ？珍しくコネシマさんが置いてけぼりになっちゃったんだから」
『え……』
看護婦長は、コソッとAに耳打ちした。
その声色は、驚きつつもどこか揶揄う様で、ちょっぴり楽しそうだった。
彼女の言葉に、Aはじんわりと胸が熱くなった。
そんなに急いで来てくれたのか。
闇商人に紛れて、自分たちを救い出す機会を狙ってくれていた。
そして、危なくなったら、ちゃんと自分たちの前に出てきてくれた。
ふと、Aはチーノの姿を探した。
すると彼は、救出された子供達に囲まれて笑顔を浮かべていた。
やっぱり、彼はAのピンチに駆けつけてくれた。
不安で怖くてどうしようもない時、必ず隣にいてくれるんだ。
じぃっとチーノを見ていると、視線に気づいたのか彼もこちらに目を向けた。
ドキッと、Aの胸が大きく跳ねた。
顔もカアッと熱くなって、心音は早鐘を打つ。
『(あれ……？)』
なんだろう、これ。
得体の知れない体の不調に、Aは思わず俯いてしまった。
『あの……看護師さん』
「んー？なあに？」
『私……やっぱり、体がおかしくなったかもしれないです』
「え？」
看護婦長がAの顔を覗き込むのと同時に、チーノが駆け寄ってきた。
「A、大丈夫か？」
『は、へ、えと……』
「なんだか、まだ気分が優れないようなんです。やっぱり、早急にしんぺい神さんに診てもらった方がいいかもしれないです」
「え、そうなん？」
すると、チーノは心配そうに彼女を見つめた。
まだ心臓がドキドキと脈打っているせいで、Aは慌てて顔をそむけた。
「A？ホンマに大丈夫か？」
『だ、大丈夫です……』
「Aさん……」
Aのぎこちない様子に、看護婦長の彼女だけが何かに気づいた様だった。
未だ首を傾げているチーノと、俯いたままのA。
Aは相変わらず顔を赤らめ、小さくなっている。
しかしチーノは……どこか神妙な面持ちでAを見つめていた。
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作者名：双葉ちほ | 作成日時：2021年7月3日 22時
