第14話：不穏な電話 ページ1
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―――ＲＲＲＲＲ……
「チーノ隊長、お電話です」
「俺のやないで」
「隊長宛てのですから言っているんですよ……」
電話を取り次いだ兵士が苦い顔をして、ため息をつく。
その様子を見て、チーノは渋々電話を取った。
「もしもーし、国王軍の何でも屋、後方支援部隊長のチーノやでぇ」
「ちゃんと出てください！！」
兵士がガーッと小さく叫ぶも、チーノはペロッと舌を出すのみ。
が、しかし。
電話口の相手の声を聞いて、そんなおふざけテンションは吹き飛ぶことになる。
“チーノ！！”
「あれ、なんやラウラか。どないしたん？」
電話の相手はラウラだった。
滅多なことでは城に連絡してこない彼女の電話に少し驚きながら、口を開こうとした時……
“どうしよう、チーノ！オルヴァーが帰って来ないの！！”
「へ……？」
教会の子供達の帰りが遅くなるのは時々あることだ。
その度に、ラウラの雷が落ちるのだが。
しかし、今回は何か様子がおかしい。
特にオルヴァーは慎重な子供で、今まで一度も門限を破ったことがない。
“あの子、Aを迎えに行くって出て行ったっきり、全然帰って来なくて……皆で近くも探したんだけど……”
「ちょ、ちょお待て。A、まだそっち行ってないんか？」
“ええ。連絡もないから、まだお城にいるのかと思ってたんだけど……”
チーノの額に、嫌な汗が流れる。
確かにAは、今日教会に行くと言っていた。
なのに、まだあちらに着いていないというのはおかしい。
本来なら、彼女はとっくに城に戻ってきても良い頃だ。
それなのに、さっきエーミールと会った時、Aまだ外に出たきり戻ってないと言うじゃないか。
だから、チーノはてっきり彼女は今日、教会に泊まるものだと思っていた。
なぜなら……もうとっくに日が暮れているからだ。
「(Aが連絡もなしに、ラウラとの約束ぶっぱするか……？)」
彼女の人柄上、そんなことはあり得ないだろう。
チーノの頭に、良くない不安ばかりが思い浮かぶ。
グッと息を呑んで、チーノはラウラの言葉を待った。
すると、電話口からラウラの心配そうな声が聞こえた。
“Aが約束の時間になって来ないのも初めてだし、オルヴァーもこんな事初めてで……どうしよう、チーノ。もし、2人が何か事件に巻き込まれでもしてたら……”
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作者名：双葉ちほ | 作成日時：2021年7月3日 22時
