【d!】乙女ゲーム症候群 (ページ5)

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この女、何言ってるんだ。図々しいにも程がある。
バカもここまで来ると驚きを通り越して呆れる。

「叶ちゃん、本気で言っとるんか……？」
女は扱い慣れてる鬱宮でもこのリアクションだぞ。

「え？そうだけど、何でそんな顔してるの？」

助けを求める目で鬱宮がこっちを見ている。助けが欲しいのは私も同じだ。

「あのな、叶ちゃん。僕達、大切な話してるんよ」
「だから今日は駄目。わかってくれるよな？」

「そうなの!?わかった！また今度ね！」

そう言い、広井は食堂を出て行った。
嵐のような女だった。

「……そんなんやから嫌いやねん」
ボソッと鬱宮の口から発された言葉。嫌悪たっぷりのそれを聞いたら、黄瀬が黙ってないだろうな。

『生徒会でもあんな感じなのか？』
「せやで、毎日仕事しないで男とベッタリ」

それは女を誑かして遊ぶお前が言えることなのか？

『それでよく生徒会が回ってるな』
「ああ、それは姫ちゃんとトントンのお陰やね」

トントン……桃瀬先輩のことか。確かに少し前に見た時も酷い隈だったな。だけど甘井も仕事するんだな。これはいい情報を取れた。

『意外だな、甘井は仕事をちゃんとするとは』
「親御さんの教育がしっかりしてたんやろうね」

甘井の家はそれなりに金持ちだと聞いたことがある。勝手に我儘お嬢様だと思っていたが、まともな人間なのかもしれない。

「それより俺が意外なのは」

「Aが姫ちゃんを甘井って呼んでる事やな
他の人は名字か名前にさん付けなのに」

『……やっぱお前のこと嫌いだ』

つい、いつもの癖が出た。鬱宮は昔からそういう所は目ざといよな。

「辛辣やな〜俺はAの事好きやのに」
『冗談が御上手ですね。』
「バレた？」

いつもの変わらない嘘っぱちの笑み。本心は仮面の下に隠れて見えないが、どうせ私をからかって遊んでるのだろう。

箸を置き、席を立つ。
『ご馳走様、奢ってくれてありがと』

次は、ないだろうが。

▼△▼△▼

「あーあ、行っちゃったわ」
彼女がいなくなったテーブルで一人、煮魚を食べる。彼女の好きな濃い味は俺には合わない。

頼んだのは彼女を知りたかったから。

「全て冗談じゃないんやけど」

零れた思いは彼女には届かない。届いてほしくもない。また築きあげたモノが崩れるのは嫌だ。

「また、誘ってみるか」

Aの為なら、何だって利用してやる。
たとえ、大切な仲間でも。
たとえ、嫌いな女でも。