【d!】蛇とイチゴ【zm】 (ページ21)

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チャックページ21

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Aが高級肉の海に溺れてからというものの、ゾムとふたりでいることに対して前ほど気まずさを感じなくなった。それはコネシマの助言のおかげというには受けた被害の大きさに見合わないし、だからといって焼肉屋に連れていってくれたゾムのおかげと言うのもそんなわけがない。ただ単純に、そこまで気を張る必要はないと思ったのだ。
あれから数週間は経った頃、学校から帰宅した際にゾムを連れて家の中に入ると、ちょうどコネシマと鉢合わせた。

「おう、どうや最近。仲良くやってるか？」

相も変わらずハキハキとした目の覚めるような声だ。ついでにガシッと力強くゾムと肩を組んでいて、それをゾムはちょっとだけ嫌そうな表情をしていたが、振りほどきはしなかった。

「はい⋯⋯。」

仲良く、仲良くやっているのだろうか。少なくともAの知っている仲良くとは違う気がするけれど、それが正しいのかどうかは判断できていない。だって、友達同士での仲良くなら分かるAも、さすがにお嬢とその付き人での仲良くは本にもネットにも書いていないのだから仕方がないだろう。
今の状態は、友達同士で言えばクラスでたまに話すけど、同じグループにいるわけではない子って感じだろうか。
しかし、せっかくならそこでこの前酷い目に遭ったと言ってしまおうと思った。焼肉事件は繰り返されるべきではない。

「いや、なんかこの人⋯⋯。」

そこまで言って、口を噤む。いつの間にか肩の腕を避けたゾムが、にじり寄ってきたからだ。それは一言も言葉を発していないのに、話そうとしていた口を閉ざしてしまうくらいには無言の圧力があった。
多分だけれど、怒ったりはしていない。口元にはうっすらと笑みを浮かべている。しかし、それは容易くAの口にチャックを取り付けた。言葉がなくとも、背筋に嫌な恐怖が伝わってくる。

「な、なんでもない、です⋯⋯。」

Aが自分のスカートの裾辺りを見てそう言うと、コネシマはそうかと言ってそのまま玄関から出て行ってしまった。Aにとってコネシマは、どこか掴みどころがないけれど、軽く背中を押してくれる、風のような人だ。風は、わざわざひとりのために長時間居てくれたりはしない。

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